かきくけコラム :「大人にも響く子どもの本 」22


毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。

小さなころから本好きで、常に本を持ち歩く子供だったという姫路在住のイラストレーター、赤松かおりさんによる、大人になってからこそ読みたい子供の本、「大人にも響く子どもの本」はじまりますー。

第22の発見 情熱をもって何かをしたい人へ:『バレエダンサー』1984

12月にご紹介するのは、バレエが大好きな姉弟のお話です。

<あらすじ>女の子が欲しいと願い続けていたミセス・ペニーは
5人目にしてやっと娘を授かります。
彼女はバレエをやりたかったという夢を娘のクリスタルに託し、
クリスタルも容姿端麗で才能もある程度あったため、みんなの期待を集めます。
でも、圧倒的なバレエの才能があったのは、その弟のデューンでした・・・。

<心に響く言葉>

デューンは、恐怖のどん底におとされた。
「どうすれば、バレエをつづけられるの?」
「頭のなかから、すっかりおいだしてしまいなさい。ーー音楽もですよ。とうさんが
おっしゃったんですからね。ミス・グリンにも、ミスター・フィリックスにもつたえてあります。」
「でも・・・・・・ぼくはなにをすればいいの?」
「学校へいって、遊んでいればいいんです。ほかの男の子のように。」
「ぼくは、ほかの男の子じゃないんだ。」
―――p293『バレエダンサー』ゴッデン作 渡辺南都子訳 偕成社 1984

まだ男の子がバレエをやることへの偏見が強い時代、前半はデューンが周りの反対や厳しいレッスンを乗り越えて大好きなバレエの道をひたむきにつきすすむ様子が描かれています。

そして、後半は姉のクリスタルが、自分の嫉妬や弱さに苦しみながら成長する姿が心に残ります。

児童文学だけれど、子どものころに読んだら告げ口したりデューンの邪魔をしたりするクリスタルが、単に意地悪なお姉さんにしか思えなかったと思います。

バレエに限らず、芸術やスポーツをやっているときに、目の前で才能の差を見せつけられるのはつらいものだと思いますが、クリスタルも、自分より弟のほうがはるかに才能があると気づいて苦しみます。

姉の教室にたまたまついていったのがきっかけでバレエを始めた弟が、皮肉にもコンクールでもバレエ学校でも、すべて期待されている自分より評価されるようになっていくのです。

けれど、自分と向き合い、傷ついて挫折しながらもバレエへの情熱を捨てない姿に胸を締め付けられました。

デューンとクリスタル、険しい道を歩む二人のどちらも応援したくなる、
情熱をもって何かをしたい人に読んでほしい物語です。


文責:赤松かおり
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赤松 かおり

本とお散歩と食べることが大好きなイラストレーターです。webやフリーペーパーなどで、イラストを描いております。

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