毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
小さなころから本好きで、常に本を持ち歩く子供だったという姫路在住のイラストレーター、赤松かおりさんによる、大人になってからこそ読みたい子供の本、「大人にも響く子どもの本」はじまりますー。
第47の発見:南極ペンギンに少しでも興味がある人へ『南極がこわれる』(2006)
9月は写真家の藤原さんが、1995年から11年南極に通っていくたびに変わっていく南極の風景を撮影した絵本を紹介します。
<心に響く言葉>
南極は地球最後の「楽園」でした。
なぜそこが「楽園」だったのか。
それは、人間がそこにいなかったからでした。
―『南極がこわれる』p52-53、藤原幸一写真・文、 2006、ポプラ社
たまたま図書館で見つけて、表紙とタイトルが気になって借りてきました。
涼し気な表紙とは裏腹に、ペンギンたちにとって、生きづらい現実がありありと伝わってきます。
かわいい~と写真を眺めてほっこりするのではなく、苦しい思いになる絵本でした。
南極にこれだけのゴミが放置されているとは全く知りませんでした。
半世紀以上にわたって世界各地の南極基地が、海辺にゴミを捨ててきた結果、
ワイヤーの端でけがをしたり、プラスチックの輪がくちばしにはまって抜けなくなったアデリーペンギンの姿
は見るのも痛々しかったです。
また、地球温暖化の影響で「氷河の号泣」と呼ばれる、氷河が大きく裂けることで大量の水が一気に噴き出す現象により
コロニーの一部が崩落すると、ペンギンのヒナは巣から滑り落ちて死んでしまいます。
巣を移動させても、アデリーペンギンは帰巣本能が強いため、親が世話をしに戻ってこないのでヒナは生きられません。
著者の藤原さんの「人間がそこにいなかったら南極は楽園だったという言葉がやりきれなかったです。
現実として写真で見せられると、人間として胸が痛くなってきます。
南極やペンギンのことは、普段はなじみもそれほどないし、関心をもちにくいかもしれません。
でも、この本をきっかけに、ほんの少しだけでも、気持ちを向けることにつながったらいいなと思います。
文責:赤松かおり
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