毎週、てくてくひめじ界隈で得意な分野を持つ方々にコラムを書いていただくコーナー「かきくけコラム」。
小さなころから本好きで、常に本を持ち歩く子供だったという姫路在住のイラストレーター、赤松かおりさんによる、大人になってからこそ読みたい子供の本、「大人にも響く子どもの本」はじまりますー。
第39の発見 大人へ:『マドレーヌといぬ』1973
8月は大人にも勇気がもらえる絵本をご紹介します。
<あらすじ>
寄宿学校で散歩に出た孤児マドレーヌは、セーヌ川に落ちてしまいます。
その時一匹の犬が飛び込んで助けてくれました。
みんなでその賢い犬を連れて帰り、ジュヌビエーブと名付けてかわいがります。
しかしある日、理事会が視察に来て「雑種だから」という理由で追い出してしまいます・・・。
<心に響く言葉>
マドレーヌがいすにとびのって、
「いいんちょうどの!おぼえていなさい!」と
さけびました。
「ジュヌビエーブほど、えらいいぬはないわ。
あなたには、てんばつがくだりますから!」―『マドレーヌといぬ』p28、ルドウィッヒ・ベーメルマンス 作・絵 1973、福音館書店
子どものころ読んだ時には理事会の人にたんかを切るマドレーヌカッコいい、最後にジュヌビエーブが見つかってよかったなあというぐらいの感想だったのですが、
大人になって作者のベーメルマンスのことを知ってより面白く読めました。
ベーメルマンスは成績が悪く、落ちこぼれて中学を退学し、16歳のとき犯罪を犯して故郷のオーストリア・ハンガリーを追い出されアメリカに送られますが、ニューヨークのリッツホテルに就職し、バスボーイから副支配人にまで出世しました。
正式な美術教育を受けたことはありませんが、メニューやテーブルクロス、壁など、どこにでも絵を描いていたそうです。
落ちこぼれだった自分をもしかしたら雑種犬ジュヌヴィエーブに重ねていたのかもしれません。(ちなみにマドレーヌは妻の名前だそう)
雑種犬ジュヌビエーブが孤児マドレーヌを救い、そしてマドレーヌに救われる物語は、迷うことの多い大人の心にも勇気をくれます。
文責:赤松かおり
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